第10回環境研究シンポジウム

講演7 極端気象がもたらす山地災害と森林修復技術

講演者:(独)森林総合研究所 水土保全研究領域 山地災害研究室 室長大丸 裕武

 近年、わが国では観測記録を更新するような豪雨が頻繁に見られ、各地で大規模な土砂災害が発生しています。近年の災害の大きな特徴として2011年の紀伊半島の災害のように深層 崩壊が目立つことが挙げられます。1000mmに達するような極端な雨量が深層崩壊発生の主因であることはたしかですが、一方で森林被覆の充実によって表層崩壊が起こりにくくなり、結果的に深層崩壊が目立つようになったことも考えられます。つまり、土砂災害は国土の状態に応じて形を変えながら発生しており、その時代の土地利用を色濃く反映しているとみることが出来ます。また、もっと長い数千年というタイムスケールで見ると、現在よりも激しい土砂移動があったことを示す痕跡が日本の平野の地層の中には残されています。

 このように、かつて経験したことの無いような規模の災害を”想定外”としないためには、過去の災害の歴史に謙虚に学ぶ姿勢が大切だと考えます。2011年の震災を受けて、災害に対する関心が高まりつつある中、現在起きている山地災害は歴史的に見るとどう解釈されるのかを考え、今後の山地災害に対する防災のあり方を考えてみたいと思います。