第9回環境研究シンポジウム

講演4 利用した「水」への対応

独立行政法人土木研究所 水環境研究グループ 水質チーム 上席研究員南山 瑞彦
情報提供機関:国土交通省国土技術政策総合研究所

概要

日本の年平均降水量は世界平均の約2倍の量となっているが、人口1人当たりの水資源賦存量は世界平均の半分以下と言われている。また、年平均降水量の経年変化では小雨年と多雨年の開きが次第に増加し、渇水年の年降水量が現象する傾向にあり、水資源確保の重要性が高まってくるものと予想されている。日本では1978年の異常渇水を機に、福岡市において1980年に水洗用水として再生水の利用が大規模に開始されて以来、水洗用水、融雪用水、環境用水、工業用水、散水用水等様々な用途に再生水が利用されるようになってきている。都市内における貴重な水資源確保の観点、さらにヒートアイランド対策としての打ち水利用など新たな利用用途も期待される等、再生水利用の重要性は今後益々高まっていくことが予想されている。そこで、再生水利用の実態やその適切な利用に向けた研究状況について紹介する。

また、我々は日常の生活で様々な化学物質を使用しており、その種類は年々増加している。その中で、人が服用する医薬品は体内で代謝されたのち排泄物とともに排出される。これら医薬品等は生理活性作用を持つことから、低濃度での水生生物への影響が懸念されている。そこで、生活排水の処理状況が異なる都市域の小河川における医薬品等の存在実態を把握し、集水域の生活排水の処理状況と医薬品存在濃度の関係について明らかにするとともに、その存在濃度の生態リスク初期評価を試行した成果を紹介する。