第16回環境研究シンポジウム

「スマート社会と環境 ~豊かな暮らしと環境への配慮の両立を目指して~」の開催にあたって

 環境研究機関連絡会は、環境研究に携わる国の施設等機関、国立研究開発法人及び国立大学法人の研究機関が情報を交換し、連絡を密にしながら、それぞれの環境研究に係る活動を推進するとともに、その活動及び成果を広く社会に発信することを目的としています。このため、当連絡会では、毎年「環境研究シンポジウム」を開催し、広く研究者や行政関係者、市民の皆様に最新の環境研究の成果を報告してきました。

 さて、2018年の夏、さまざまな自然災害が日本列島を襲いました。6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨とそれに続く猛暑、9月の台風21号と北海道胆振東部地震など、観測史上初や最大という記録ずくめの現象が頻発しました。これらの自然災害を通じ、多くの日本人が、国民生活も産業活動も自然環境とは切っても切れない関係にあること、人間社会と環境との関係を再構築していく必要があることを強く認識したことと思います。2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標:SDGs」においても、環境との調和が人類の持続的発展のためのグローバル目標として大きく掲げられています。その達成を目指したESG(環境・社会・ガバナンス)投資が、産業界において急速に拡大しています。

 それでは、どのようにして人間社会と環境の関係を再構築していけば良いでしょうか。その大きな柱の一つが平成28年1月に閣議決定された第5期科学技術基本計画に示された「Society 5.0」です。これは、近年、飛躍的に進歩する情報通信技術とデジタル技術を活用し、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合することにより新たな価値を創造し、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を構築する概念です。Society 5.0という名称の由来は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5の新たな社会の実現を目指すものです。この考え方は、国連のSDGsに大いに貢献するものと産業界からも期待されています。農研機構としても、本年10月に農業情報研究センターを新設する等によって、農業・食品分野での「Society 5.0」の早期実現に向けた取組を強化しています。

 このような視点から、今回の第16回環境研究シンポジウムでは「スマート社会と環境」をテーマに掲げました。本シンポジウムでは、テーマに関連した最新の研究成果を、環境研究に携わる各分野の第一線の研究者から13の講演と約100題のポスター発表とで報告します。これらの成果が、Society 5.0の実現とSDGsの達成、さらには人間社会と環境の関係の再構築に向けたイノベーション創出の端緒となるよう大いに期待しています。本日お越しいただいた皆様には、これらの講演、ポスター発表を通して、私たちの研究活動にご理解いただくとともに、忌憚のないご意見を賜ることができましたら幸いです。



(平成30年環境研究機関連絡会事務局)                
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 理事長 久間 和生