第7回環境研究機関連絡会成果発表会

「自然と共生する社会をつくる」の開催にあたって

独立行政法人農業環境技術研究所 理事長佐藤 洋平

 環境研究機関連絡会は、環境研究に携わる国立および独立行政法人12研究機関が、様々な環境研究分野で緊密に連携し、それぞれの研究活動を推進することを目的としています。そのため、環境研究機関連絡会は、常日頃の研究連携を進める連絡会としての役割を果たすばかりでなく、年に1回、成果発表会を開催して、皆様に最新の研究成果をご紹介しています。この成果発表会も、今年で7回目を迎えました。以前の成果発表会は、加盟機関の多くが位置する筑波研究学園都市において、環境に関わる研究成果を発表し、研究者間の意見交換を行うことを目的に開催していました。第5回目からは、この一橋記念講堂をお借りして、その時、その時の社会に即した問題を取り上げ、そのテーマに関する最新の研究成果を、広く多くの皆様にお伝えしてまいりました。一昨年は、「気候変動に立ち向かう~科学的知見、そして対策へ~」、昨年は「無駄のない社会をつくる-資源循環の『見える』化-」をテーマに開催し、多くの方々のご参加いただくことができました。

 2010年(平成22年)が国連の定めた「国際生物多様性年」であり、また10月には名古屋で「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)が開催されることから、今年は、成果発表会のテーマを「自然と共生する社会をつくる」として、生物多様性の保全と持続可能な利用を推進し、自然との共生に向けた地域づくりを促進するための研究成果を皆様にご紹介いたします。「生物多様性」とは、あらゆる生物種の多さと、それらによって成り立っている生態系の豊かさやバランスが保たれている状態をいい、私たちの生活はこの生物多様性からの恵みに支えられています。この生物多様性の保全のためには、自然と共生する社会をつくることが必要ですが、私たちはいったいどうすればいいのか?この問いに解答するべく、環境研究機関連絡会に加盟している研究機関は,ここで最新の研究成果をご披露致します。

 本日はまず、横浜国立大学大学院の嘉田良平先生をお迎えし、「アジア農業の生態リスクと食糧安全保障のゆくえ」と題して基調講演をいただきます。その後、「自然との共生を考えた社会資本整備」、外来生物から環境を守る「侵略的外来生物のリスク評価と管理」、「森と海のつながりによる豊かな生物相づくり」、「里地里山の利用・管理と生物多様性」、ウオーターフロントを環境再生する「沿岸域の環境修復に向けて」の5つのテーマに関して各研究機関から研究成果を発表し、自然と共生する社会をどのようにつくっていくのか、皆様と一緒に考えたいと思います。

 環境研究という広範な分野で、それぞれの使命を担う研究機関が連携を緊密にして研究を推進するとともに、併せて、この様な発表会で皆様と対話をしながら社会に貢献していく。私たちは、この成果発表会をこのように考えています。本日の成果発表会にご参集いただきました皆様には、今後ともご理解を賜るとともに、忌憚のないご意見・ご批判を賜りますれば幸いです。